水圏生物科学専攻修士課程入学試験(専門科目)の出題範囲等
漁業資源学
出題範囲
漁業資源学では,漁業資源を持続的に有効利用していくために必要な基盤的知識を問う。具体的には,漁業生産に関する技術的側面,資源生物学的・生態学的基礎,経済的側面,制度的側面,社会的・国際的位置づけのほか,水産資源の動態,資源評価,資源管理,漁業管理等について出題する。
キーワード
日本・世界の漁業生産,漁場形成,資源変動,漁業技術,漁業制度,漁業経営,水産物需給,水産物流通,漁業に関する諸情勢・国際関係,資源動態モデル,漁獲過程,資源特性,資源評価,資源管理
参考となる図書
「ポイント整理で学ぶ水産経済」(廣吉勝治・佐野雅昭編、北斗書房)
「水圏生物科学入門(第3章,第5章)」(会田勝美編)、恒星社厚生閣)
「新訂水産資源解析学」(田中栄次著、成山堂書店)
「水産白書」(農林統計協会)
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水産増養殖学
出題範囲
水産生物資源や資源を取り巻く環境に積極的に働きかけることによって資源の保護・増大を図る増殖と水産生物を人の管理下において飼育することによって生産を行う養殖に関わる科学である。試験では、増殖・養殖に関する知識に加えて、その基礎となる増殖・養殖対象生物の生理や生態に関する知識を問う。
キーワード
繁殖保護、繁殖助長、種苗、養殖環境、餌飼料、感染症
参考となる図書
水産海洋ハンドブック第3版(生物研究社、2016)
最新水産ハンドブック(講談社、2012)
水圏生物科学入門(恒星社厚生閣、2009)
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水圏生物利用化学
出題範囲
わが国では様々な生物種からなる水圏生物を古くから食品として利用し、だしを中心とした和食文化を形成してきた。水圏生物は陸上生物とは著しく異なった特徴を持つため,それを理解して利用する必要がある。また、水圏生物が自らを守るために生産あるいは貯蔵する自然毒には致死的な作用を示すものがあり、その理解なしには安全な利用は不可能である。一方、水圏生物には健康調節作用をもつ成分や医薬や生化学資源として重要な成分も多く、その有効利用が求められている。本試験科目では、水圏生物の食品としての利用、水圏生物に含まれる有毒および有用成分について出題する。
キーワード
和食文化、水産食品の種類と特徴、鮮度、貯蔵方法、藻類の食品学的特性、魚介類の呈味成分・匂い・色、水産食品の栄養価と健康機能性,衛生管理方法、魚介類食中毒の原因物質、水圏生物の刺咬毒、水圏生物に含まれる医薬資源[MOU1]
参考となる図書
「水産利用化学の基礎」(渡部終五編、恒星社厚生閣)
「水圏生化学の基礎」(渡部終五編、恒星社厚生閣)
「海から生まれた毒と薬」(Anthony Tu、比嘉辰雄 共著、丸善出版)
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水生動物学
出題範囲
本試験科目では、水圏生物科学専攻の主要な研究活動の場である海洋・河川・湖沼等に生息する水生動物を扱う際に必要となる基礎的知識(分類、系統と進化、形態、体の構造と機能、生活史および生態)を問う。出題は水生脊椎動物と水生無脊椎動物で分けて行い、無脊椎動物に関しては上記に加え利用法や有害性といった我々人類との関わりについても出題範囲とする。
キーワード
脊椎動物:摂食・消化、体表、筋肉、骨格系、鰾、呼吸器、仔魚・稚魚、回遊、繁殖
無脊椎動物:摂餌様式、消化系、循環系、排出系、神経系、生殖および発生、有用種/有害種
参考となる図書
「魚類学」(矢部 衞・桑村哲生・都木靖彰 編、恒星社厚生閣)
「水産無脊椎動物学入門」(林 勇夫著、恒星社厚生閣)
「図説 無脊椎動物学」(R.S.K.バーンズ 他著、本川達雄 監訳、朝倉書店)
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水産動物生理学
出題範囲
水産動物生理学は、魚類をはじめとする水生動物が示す種々の生命現象(環境適応や生殖など)のメカニズムを、生体内の様々な器官、組織、細胞、分子の機能の観点から(つまり生理学的な観点から)理解することを目指す学問・研究分野である。本試験科目では、器官、組織、細胞の形態・構造、そして、それらが形成されるプロセスである胚発生のメカニズムも含めた魚類の生理学を出題範囲とする。
キーワード
細胞・組織、神経、内分泌、免疫、環境適応、浸透圧調節、呼吸・循環、感覚、生殖、胚発生、形態形成、器官形成
参考となる図書
「増補改訂版 魚類生理学の基礎」(会田勝美・金子豊二編、恒星社厚生閣)
「魚類発生学の基礎」(大久保範聡・吉崎悟朗・越田澄人編、恒星社厚生閣)
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水圏生物環境学
出題範囲
本試験科目では、水圏生物の生態、生理、生産を理解する上で基礎となる環境因子と生物の相互作用についてその知識と理解力を問う。とくに浮遊生物の時間的・空間的な変動様態とそれを制御している環境要因との関連や、そこに生息する生物群集が水圏の生物生産と物質循環に果たす役割に関する問題を中心に出題する。
キーワード
生態系、物質循環、生物生産、栄養塩、プランクトン、食物網、気候変動、環境変動
参考となる図書
「生物海洋学入門 第2版」(講談社・關、長沼監訳)
「海洋生態学」(共立出版・日本生態学会編)
「海洋学」(東海大学出版・東京大学海洋研究所監訳)
その他、市販の海洋学、水圏生態学に関する教科書
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水圏生命化学
出題範囲
水圏には系統進化的に異なる多様な生物が生息しており、それぞれの生物種が特徴的な構造および機能をもつ種々の生体物質を含む。また、陸上圏とは異なった環境下にある水圏の生物は独特の進化を遂げており、陸上生物には見られない代謝も認められる。本試験科目ではこのような特徴をもつ水圏生物の生命を理解する上で必要とされる生物化学および分子生物学的内容を出題する。
キーワード
タンパク質の構造・機能、糖質の構造と機能、脂質の構造と機能、核酸の構造と機能、低分子化合物の構造と機能、微量成分の構造と機能、エネルギー代謝、水生植物の光合成、分子遺伝学・分子生物学の成立の歴史、ゲノムの構造、タンパク質の生合成、遺伝子の発現とその調節、有性生殖と遺伝、分子進化、バイオテクノロジー、遺伝子クローニング、分子生物学的解析に関わる諸技術[MOU2]
参考となる図書
「水圏生化学の基礎」(渡部終五編、恒星社厚生閣)
以下の参考書の中で、ヒトに特有の内容を除いた基本的・一般的・原理的な部分。癌関連の内容も除く。
「理系総合のための生命科学第4版」(東京大学生命科学教科書編集委員会、羊土社)
「DNAサイエンス 第2版」(清水信義ら監訳、医学書院)
「ヒトの分子遺伝学 第4版」(村松正實ら監修、メディカルサイエンスインターナショナル)の1〜4, 6〜16、18、20章
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水圏生態学
出題範囲
水圏生態学は、海洋・湖沼・河川といった特有の物理化学環境条件を持つ水圏における生態学で、その目指すところは陸域の生態学と同様に、「生物の分布と存在量を規定する相互作用について、至近的説明と究極的説明を試みる」ものである。本試験科目では、水圏生態系における環境、群集、個体群、個体およびそれらの相互作用について出題する。
キーワード
水圏生態系、群集、個体群、個体、生活史、行動、個体発生、適応、進化、生存、成長、繁殖、捕食、被食、競争、共生、回遊、拡散、分布、生態系サービス
参考となる図書
「水圏生物科学入門」(会田勝美編、恒星社厚生閣)
「海洋生態学」(日本生態学会編、共立出版)
「魚類生態学の基礎」(塚本勝巳編、恒星社厚生閣)
その他一般的な生態学の教科書
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